サファイア・マン《面白い男編》〔51〕キャロルは自分のパーソナリティを決定するのに四つくらいに分けて方向性を考えていました。顔立ちも美人ではなく、それでも人なつっこさが幸いして多くのテーブルからお呼びが掛かる。毎日をダラダラと惰性で過ごすのではなくひとつでもいい、形式的でもいいから進歩が欲しかった・・・。今なら日記をしたためたでしょうが当時まだ二十六歳、自分の人生は明日にも開くと高を括っていたことがある意味、能天気でしたが効を奏したのです。若いときからしゃかりきになって、お金を貯めて、計画的では無かった分、自分が何にも染まっていないことを知り、今にも驚愕しそうになるです。もしも今、ファッション家が近付いてきたら、すぐにでも洗脳されるであろうし、もしも今、企業家が近付いてきたら、すぐさま感動して自分の才能を全部預けることでしょう。しかし・・・ここに神さまの算段があります。この子を、みずから危険な目に遭わせるでしょうか。そしてこの子はニッポンの真の民主主義の申し子でもある。そういった稀有な人材を、すぐさま危なげな地帯に置くでしょうか?生まれたときから知り合う人間が限られている。すると一体誰が接近出来るとでもいうのでしょう。二十六歳、当時のキャロルに人間不信は微塵もありません。人は誰も根底は善であるとの認識を堅く持っているのです。