ブラックオニキス・マン


 一回総スカンを、食い、もう、ここも、駄目か…そう誰もが思ったのに、母は舵を取り直した。それこそが、我慢だろう。面舵一杯を切り損ね、救命ボートに落下し落ち着いた。そして、転覆しそうなボートから本丸へ這い上がって行った。また、元の木阿弥に戻って安堵をしたのは他ならぬ母だった。車も入れたら総額500マンの借金を母は返せる決心を固めた。まだ68歳。83歳の方が、ばりばりリーダーを務める姿に、自分を重ねた。あと、15年もあるやんか…僕等の家のローン35年に比較したら、確かに短い。