初で、テレビが茶の間に来た喜び…あの時の感動を僕等は知らない。母は最初は住吉の銭湯で見たらしい。赤ちゃんだった母は男湯にも入り女湯も同時に経験して、男湯と女湯を交互に味わう。僕等の祖父は女性より気配りはたけていて、その分、母は緊張を余儀なくしたという。徹底的に、洗う祖父を苦手とし、バンカラな祖母の方を好んだ。学業獲得に祖母はしゃかり気になる分、銭湯では、洗うことにはそこまでしゃかりきにはならず、母は女子のおおらかさに打ち解けて行った。まだ布おむつの時代だ。祖父は今で言うイクメンで、アパートの水洗便所の激流で布につくうんこを洗い流していたらしい。男の方が育児には向く。65年前からそれは証明されていたようだ。