アクアマリン・マン87

 自信を無くしてうつむく容子もあるかと思えば、その舌も乾かぬうちに、己の自信を豪語する。一体全体どっちが本当?って僕だって煙(ケム)に巻かれた。どちらも容子の本質が関与でそういう言動にさせていた。言動の本体は容子だった。男と女の両方の気質を上手く使い分けて、これまで来た容子が、本当の自分を発見出来ることが真実にもっとも近まる極意だろう。このところの容子を見ているとどんどん性格自体が明るくなってきている。たまにいじめに遭ったとほざくけど、それもしかり。仕事が出来なければ叩かれるのがコンビニだ。簡単な仕事だからこそ、ミスはしょっちゅうでは皆が黙っちゃいない。容子がそれでも明るくなったとするなら、それもこれも外に働きに出たことが大きかった。僕が亡くなって次の3月で三年もの月日が流れたことになる。生命保険も掛けていなかった僕だ。本来なら夫として最低限、2000マンくらいは生命保険は入っておくべきと僕も猛省したが、僕が貯蓄を優先して暮らしたゆえに、生命保険自体眼中になかった。娘がそのことについて容子に質問していたのが気に掛かった。お父さんに、本当は、愛されてなかったんじゃない?生命保険も掛けてないなんて・・・容子はまったく反論しなかった。愛されてなかったんじゃない?っていう娘の問いかけが、実に唐突で初々しく聞こえたからだった。もしも愛があったなっら、生命保険があったはず・・・とそう捉える娘が、僕は現実志向だと思うし、それが今の常識なのだ。しかし僕はそこは勘弁して欲しいってそう思った。二階建ての家を建てたのだ。そこを見て欲しい。全部を叶えることなんか男には出来ない。ひとつでも叶えてあげた僕を評価して欲しい。(24313)