ブラックオニキス・マン179

 今日の朝だった。お客様が鬼ころしっていう焼酎の紙パックミニ

を購入して、突然自分の父親のことを思い出した母だ。父、貞彦はいつもこの焼酎の大パックを抱えて我が家を訪問していたのだ。なぜ、それを好んだのか?祖父が一度気に入ったら凝り性だったことも起因する。何度も母にこう言っていた。鬼殺しっていう名前がいいねえ。これを購入したいっていう意欲が漲る名前で、自分でも知らず知らず買ってしまうって。母は父親の影響をもろに受けて育ったのだろう。いいものは自分を陶酔に導くもの、それが長ければ長いほどに度し難いって。この度し難いがどんな意味になるかというと、欲求を抑えることが難しいっていう類だ。我慢しようとしてもこの種の欲望は誰しも抑えられるものではない。母は鬼という一文字に以、前から興味を持っていた。鬼退治の昔話、桃太郎伝説を聞いたときから大ファンだったのだろう。西洋の物語と日本の昔話はちょこっと違う。西洋には生息しない鬼ならではの神出鬼没を、きっと心に描けば間違いない。オニキスマンの僕も、少しあやかることが今後可能になるかもしれない。鬼のキッスなら速やかに受けたい。それがどんな意味を持っているかということよりも大事なのは、鬼がキスするという意外性である。誰もが心に抱くのは、あのとき、もっと、母に対して優しくしていればよかったな・・っていう悔いである。もっと素晴らしい対応が出来ていればすべてがプラスに輝いた。今は鬼がどう出るか?そして鬼の一番の弱点は誰が知っているのだろう。僕は鬼が涙に強いと思う方だ。鬼の目にも涙の路線はそこでたちまち消え去る運命だろう。