ブラックオニキス・マン176

 

母のレジに来た地元の剣道クラブ、剣聖会時代の親御さんが母親に話しかけて来て、母はとうとう思い出す。女子でも並外れた体格を持って精進していたあの娘さん。僕よりも一歳下になる。前からそのお母さんは母のことに気がついていたけど、今日はとうとう向こうから話しかけて来たのだ。どちらの母親も心境は嬉しい!!の一言だっただろう。芸術の道で開花するのは剣道で飯を食っていくのとよく似ている・・・って母は思う。そしてその女子選手のお母さんがこう言うのだ。剣道をやってて良かったのか、それとも結果、何か生まれたのか?っていうと、そこは全くわかりませんねって。恐らく謙遜である。とてもおおらかな心を持つお嬢さんで僕もその体格に圧倒され、彼女に負けることをよしとはしなかった。男の意地でもあった。一歳年下なことで、僕が負けることはなかったけど、対決するたびにドキドキしたものだ。剣道を教えてくれた師範たちはほぼ無給でボランティアで教えに来ていた。勤務としての報酬が生まれなくとも、踏ん張る姿に、母は何かを会得したのだろう。無給でも価値がむちゃくちゃある仕事である。剣道だけにとどまらない、人の’’育て’’だ。誰かを良くすること・・・そしてそれを見てくれている人が必ず近くに存在する。そこを思うのも、芸術の開花によく似ているからこそ。2つの世界には相通じるものがある。母は、コンビニでお金を稼ぐっていう決心をしたとき、セブンイレブンに投降する兵士の気持ちであった・・・と告白している。このときの清明な心が、今後を支える神通力になっていくのだろう。☆ファミマ戸石にて☆