デニム・ブルーママン17の14

 教室に入ると皆が歓声を上げて迎えてくれ緊張の糸も解れます。転校の理由は特別説明はなしで容子はすぐ打ち解けていたようでひとまず、安心しました。それでも家の近所が怖かったみたいで、スクールバスを朝は利用するも、放課後それに乗ることはあまりなかったようです。あの頃の日大高校は窓の外には田んぼや畑が広がり、校舎まで一本道でした。今の様相とは段違いで蛙の合唱が聞こえていたのです。特別に仲良しになってしまえば、その友達が色々質問してくるかも?と容子はバリアを設けます。広く浅くです。髪型も一年生の時とは違い、後ろでひとつ結びに替えていました。私は月野うさぎの髪型の方が好きでした。ある女生徒から姫というニックネームを授かり容子は背筋もピンと張り詰めていたようです。学びも公立に比較すると断然易しい。そこまで順位が下に行くこともなく一学期を無事に終えてしまうのです。地元の人たちの噂がもっとも怖くて、そういう苦しみがあっても学校は行かないといけない・・っていう覚書のようなものがあったのでしょう。中学とは違いみんながラフでしかも当時からそこは裕福な子女が多くて個性の百花繚乱の学舎だったようです。二学期になり、東高から転校してきた女子の存在がまた容子を明るくバックアップします。彼女は私立が自分には合っているってみんなの前で話してくれて、容子の立場をさらに確定してくれたといいます。今までは容子に対して、どこかに疑心暗鬼がどの生徒にもあったのが、その転校生のお陰で救われた・・・いつも容子はそうやって孤立を免れるような星の巡り合わせがあって母親としてほっとした一面を回想しています。もしも貧困の家なら?って私もそこまでを鑑みて今、この子ほど、恵まれた子供はいなかった・・・と噛みしめるのです。