デニム・ブルーママン17の6

 

思い込みが全員にあって、勉強に興味がない場合は、教科書を開いても何も伝わっては来ない。しかし将来を考え皆が勉強に没頭する。試験前には本腰を入れる。この辺での各人の処し方、捉え方は千差万別ではあるけど、最低ラインがあった。本当に勉学が好きな学者志向の生徒もあれば、今を凌げればいいんだ・・っていう安楽志向、しかしどちらであっても赤点は取らない。容子の場合、最初からバーに何回もお尻が触れて、飛べない高跳び選手みたいで、私も心の奥底で、苦悩はありました。優等生だった期間が長い生徒です。しかも自尊心が相当分ある。作家脳ももちろん有している。プライドが許さないっていう独自の傾向もあったでしょう。そういう世の中はいけない!!改革しなきゃ!!ってみずからに発破を掛ける容子もいただろうけど、私は相談してこないことをいいことに静観を取ったのです。幼いときに冒したあの事件に比較したら、すべて、ちっちゃいことだ・・・っていう認識が強固でした。世の中で平穏無事とは言えない落第生になっても、他校に転校すれば落第は免れる。容子が留年を絶対に取らないことを私は承知していたのです。これが運命決定論者の見方だったからです。もうひとつ、有りました。世間に振り回されて忍従してしまえば改革は出来ない。一年遅れてでもその道を模索するという姿なら、立身出世志向でも学業派になるでしょう。容子は自由文人です。根っからのその気質には、求める美味が存在していたのです。転校して様々な世界を放浪することに意味がある。そこでどんな人と関与していくのか?違う感性に触れて琴線を震わすのか?・・・さばさばとした静観態度の私に容子は絶対に自分の苦しみを話しては来ない。真のプライドとは実際こういう風情を言うんだな・・が私に伝わっていました。