アクアマリン・マン64

 

いつものお気に入りの店でひとつ定食を頼み三人でシェアして食べてさあ帰るというとき、レジで店主に叱られる。奇しくも僕が生前中、最後に家族と行った店だった。うちでは、うちでは、・・・・・言いにくそうに容子に何か言おうとしている。しかしその先が容子には想像出来ない。本当に言いにくいことなんですが・・・・ってその内容がとうとう店主から明かされた。うちではひとつの定食を三人で食べることはやってません。ひとりワンオーダーという決まりです。ああ・・・そうなんですね?申し訳ないです。容子は謝罪して心の中でむかついてはいても、顔に出さずに店を出る。家族はすでに店を出てふたりで歩いている。おもちゃのあおきに向かっていた。容子はこのことを家族には絶対に話せない。いや、あえて、話すまいって心に誓った。毎月数回利用のお得意様でもこの扱いなのは相当に店側が苦しいから?容子の優しさが身に沁みた。悪いが僕だったら言い返す。ひと家族で三人、しかもひとりは七歳の子供だ。残念至極である。味は良くてもお客様の心の底まで入っていき、感謝を表明出来る店は激減した。コロナで心がガサついて、肝心なものを見失っている。店内の客はがらがらでこんなことを平気で言える体質がまずおかしい。僕はしかし容子の気持ちを察した。言いにくいことなんですが・・・ってしばらく店主が、時間を置いたことだ。前々から言いたかったけど、言えなかった…しかし今回は言いましょうっていう態度豹変だろう。家族が結構ばりばりものを言うがその娘がいないときを見計らい・・・僕はこういう態度が許せない。しっかりと面と向かって全員の前で言ったら良かった。それなら逆に気持ちが良かった。