アクアマリン・マン60

 女性は子供を産むときにすでに神から授かっている。この子を頼むよ・・・って勇気を振り絞って産んだことを神は称賛するにとどまらず、女性が母になることを祝福してやまない。どんなことがあっても弱気は禁物。この子を立派に育てあげてくれ!!父親になった男の側にも神からのプレゼントがあったはずだ。女性が神から祝福を受けて頷いたのに匹敵するもの・・・長い間、それが一体なんなのか、探しても見つからなかった僕の前に、とうとう容子の父からの伝言が見つかった。最重要の三文字だ。当時それを父親から手渡されても、ピンとこず、容子は二階の部屋の紙袋の中に直し込んでいた。部屋を二階に移して、そこで整理整頓していくうちに父親が綴じた文面が出てきたのだ。それは松本清張の言葉である。小説作りの6つの要素が丹念に記してある。僕も拝ませてもらった。一、筋。ニ、取材、三、視点、四、背景、五、文章、六、交換作業。探し当てたぞ!!っていうところの歓喜が容子に駆け巡る。しかしみんなもえええ?ってそこでしばらく沈黙するだろう。なぜなら容子は狂歌師。なぜ、文章が?僕はそこまで、文学音痴ではなかった。ありがとう!!っていう思いが容子の脳裏を駆け巡ると同時に僕にも稲妻が走る。松本はここを強調していた。小説はやはり、読んで面白くなければならない・・・と。ちなみに六番目を明かしておこう。気になる方々は多い。交換作業の中身になる。清張は歴史小説を執筆しながら現代小説を交互に進行させる美味を解いている。誰にでも薦められる作法ではないとしながらだ。