ブラックオニキス・マン141

 意外に短い時間なのかもしれない。親と子が一緒に暮らせる時間だ。生まれてずっと死ぬまで一緒ではない。大学にいくとき、家を出るケースもあれば、僕のように就職で関東圏の県まで行き、そこで永住も視野に入れた生活をゲットする場合もある。僕はしかし長崎に戻ってきた。ふるさとに就職することを今度は向こうに棲みつつ挑んだわけだが、今は全く、後悔はしていない。長崎にもいい職場があることを自分の根気と努力で見つけた。なかなか正社員の職がないと揶揄されてきた長崎だった。働き手や新卒者がここを離れて正社員を探すことも事実多いといえる。他県へ行ってやっと家族の温かみが芯に迫ることも多い。こんな僕でも、もっと親孝行をして家を出ればよかったのにな・・って何回かは両親のことを心配したり、家を出て兄弟の絆に気がつくことも実際に多かった。中々そばにいると気が付かないことが多い。自分だけが努力していっぱしになって行くわけではないのに、親が探し出してくれた僕の長所にも気が付かないまま、迂闊にも過ごしてしまうことが誰しもある。独身者の飲むビールはさぞ旨いだろう。その青いビールグラスはいるかのデザインで独身者はひとりで自分をねぎらう。しかし妻帯者のいる男性はもしかしたらビールは買えないかもしれない。家族の犠牲になって辛抱しないと行けない場面だって実は多い。家庭の味を知っていることは楽しいことばかりではないと、しんみりなるのもそれぞれに佳境があるからだ。独身者にはゆとりと自由が。そして妻帯者には家庭の温かい連帯感とお互いの収入を一箇所へプールする義務が・・・どちらを獲ろうとそれは自由だ。日本に生まれて今それが身に染みる。こういう心境は歳を重ねて三十代に突入したからだろうか?かつてはこういう境地にはならなかった。