エメラルド・ウーマン41

 容子がやっと、私の父が精進していた創作の遺伝子の中で何を、自分が受け継いだか?そこにようやく覚醒したのも啓示のお陰です。あたしたちは共同で、啓示を分け合うという動作に今出ています。最初は私の父、光男から、文字を受け継いだ・・・とそう確信した容子。字を見ると発奮がある、きっとそうだわ・・・って。しかしそれよりももっと異端のものが存在したことを、この一週間で容子は悟る。祖父みずからの色彩眼だ・・・どこかで、容子は記憶の遺伝子を感じたのでしょう。なんで純白に弱いのか?なんで金に惑うのか…絵を描くデッサン能力として父のお手本が仙崖だったこと・・・そして色彩は独自の感性から出ていたものだったと私が言うまでもなくみずから悟ったのです。父はあちこちで修行を積み、ちょうど男児が生まれたというのでその合間に長崎に戻っていて関東大震災は免れていたのです。幼い私達に、耳にたこが出来るほど、その話をしてくれた関係上、私も容子に話をする機会があった。どこぞの財閥のお屋敷の、押入れの奥に大事に収めてある父、光男の、のぼり。恵比寿さんを描いた鮮やかな幟・・・私もそれは見てない。父も渡してそのまま…。弟だって、見る機会は再びは来てはいない。しかし弟の目に焼き付いて離れなかったところを見ると、一回はその幟が、はためいているのを見たのか?それとも収めてあるものを見せてもらったのか?そういう意味では芸術家は不思議な職業だと言える。誰に収めたのか?で人生は変わってくる。収めた相手が善良で芸術眼にたけ、布の保存状態もいいのなら、いつかは世間で披露も叶うに違いない。

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