デニム・ブルーママン14の7

 私が戦後特に青春時代、いじけて逆ギレ状態になっていたことは言えます。むろん女子ですから顔に出したりは出来ない。格式ある伝統に育まれてその様式を学んだのに、すべて残骸のごとく崩れ去った。しかしこの破壊によって新しい日本が誕生したのも事実なのです。なぜ、ここまで私は暗く毎日を暮らしていたのか?ブリザードという時代と時代のクレバスできっと奥底まで落下して周囲を見ても真っ暗だったから?いいえ、逆です。自分たちには軍人の家族であるという負い目があったけど、そうではない周りの人々には笑顔も見えていた。先の見えない戦争がようやく終わって、民主主義がその太陽が昇っていたからです。私は自分の姉や妹が一様に落ち込んでいるのも理解できたし船は沈没することは視野内になりながらもなんとか父が生還してもう一回、ただいまって言って家の玄関に立ってくれたらな?ってそればかりを残念がっていたのです。そういう奇跡は起こらないとは分かってはいても思ったのです。母の憔悴は半端なく兄はしっかり支えて鹿児島で踏ん張りました。みんなが助け合う。ドン底になって頼れるのはふるさとでありそして古い友だちでした。父が生きて帰ったとしても戦犯に掛かってしまうのでは?との憂慮は消えないでありましたから、どこかで、立派に亡くなったことに安堵する私は自分のふがいなさを自分で責め立てていたのです。戦争の指導者が大変な事態になることは世間でたびたび報道がなされていた。私は父には及びません。その心の寛大さ。潔さが私には微塵もなかったのです。

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