エメラルド・ウーマン39

 何も手落ちのない大佐の家で育成されたにしては、毎日ぐーすか寝てばっかり・・・周囲の評価は日に日に落ちていこうとも、そんなことは全く気にしない。ただ、容子の母は一縷の望みとして、幼いときに施した音楽の教育が将来、花開くのでは?ってそこを思っていたようです。コーラスの先生が目の前にいらっしゃったことで、そこにも入部しますが、声が素晴らしいとは思えなかった。それは理由があるのです。声が美しいオペラ型の人は日頃から成りが違う。つまり、平素の行いです。音楽の先生たちは小学校でもどこか上品で、みんなと打ち解けが早い。そこは堅いでしょう。始終旦那に罵声を浴びせるうちにも容子の母の声は醜い声に変容したのです。みんなはええ?声が醜い?ってはてなマークを付けますか?それはオカド違いです。心が整頓している人の声が美しいと私は思う方だし、毎日身を粉にして働くひとの出す吐息は神様のように清楚だと私は捉える方です。そういった精進するとか鍛錬するとか、大事な動作の徹底領域を容子の母が戦後、さっぱり捨て去ってしまったことを私が残念がるのも、日本を根本から支える精神に深く関与しているからです。頑張るなんてもういい加減止めようよ!!自然体がいいんだっていう風潮を私は逃げとしか受け止めない人間なんです。

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