デニム・ブルーママン11の8

 ちょうど四年生になる直前に容子がこんな話をしてくれたのを思い出す。神社のちょうど中段の辺り。その頃は皆が敷物を持って来て広げておにぎりを食べたりお菓子をつまむ風景が見られた。木登りもしていた。今とは随分違います。通り掛かった容子は、リンゴを一緒に食べよう♪と見知らぬ男性に誘われその人がリンゴを剥いている敷物にゆっくり近寄る。彼はリンゴの剥き方が上手い。剥き終わると自分の膝の上に乗るよう促す。でも、容子は思いとどまったと言います。もちろん、林檎も諦めざるをえなかった。私は食い意地が張るあの子にしては変だなあ?と尋ねると、ナイフから連想が起こったらしいのです。自分がまだ刺されてはいなくとも、ナイフがあることで怖さが先に立ち自制が働いた。想像力は意外な処で役に立つのです。