エメラルド・ウーマン17

 私が容子の気質に敏感になっていたのも、10歳下の妹がいたからです。普段は女性らしくて寡黙な妹がやはり、作歌活動や芸事の習得のとき、全くの別人になることで私の家系にある特有遺伝子を先読みしていたふしはあるでしょう。他は見えなくなるのです。例えば私が、がく紫陽花を見て綺麗だわあ…花瓶に生けたいと単純に思うこととは、真逆の衝動的要請が妹の内奥には起こる。ここでの過程や100度(沸点)到達の瞬間が傍から見ても顕著なゆえに、妹が持って生まれた業を禁じ得ないのです。男に仕えて幸せになれるタイプでは決してない。正しく茨(いばら)の道…しかし、妹にとってはその要請こそは神様からの打診であり、栄誉なこと。私達には理解不可能な高水準の世界が存在することを肝に銘じて来ました。表現の神様の使いが妹を捕らえて放さないのです。激しい鬼女のような一面をあらわに出さざるをえない妹を、私は何度か見たことがあるのです。