デニム・ブルーサファイアママン6の11

 いよいよ引越しの日が来ます。どうしようもない哀しさが襲ってきて私は泣くまいとはするものの気を紛らわし自分に発破を掛けます。容子に心中を探られそうで怖かった・・・しかし前の晩、本人はさほどなごり惜しい風情は見せず、事件から相当孤独に陥っていたアパート内での孤立を物語るように、新天地へ掛ける思いで充満しておることは分かっていた。そしてまだ、子供なんだな・・・ってこっちがほっとするようなことを言うのです。学校に未練はないの?どうしてそんなに字が奇麗なの?って。お母さんのいいとこはあたしが一番知っている。鼻がすっとして整っていること、そして字が奇麗なこと・・・私は思う存分嬉しいのですが、そのとき、郷愁が襲ってくるのです。あの子は将来大丈夫だろうか?とかあの子はこれから伸びはするだろうけど、性格は弱い、もっと強くならなきゃあとか、クラスの子供たち全員思い出して辛くなる・・・でも自分が選んだ家庭への道。今更弱音は吐くことはいけません。思う存分これから容子と一緒におれることを思うと、何も心配はない・・・って強く思うことにして笑顔の自分を創出へ掛かる。幸い、周囲は、万事を見送ってくれてアパートの人達への挨拶も終えて三輪トラックに乗り込みます。笑顔だった容子もいつのまにやら泣いています。みんな・・・ごめんなさい!!は容子の心中に、はち切れんばかりあったでしょう。これは逃げではないものの明らかな逃避行ではあったのです。