デニム・ブルー・サファイアママン6の6

 八方美人で誰にも打ち解ける容子の性質が将来的に全部+の要素になるか?というと疑問もあったのです。毎日まっさらの心で万人の心に影響受けてその本来の素質が壊れてしまわないか?などが、母として心眼にはあったのです。いい教育を受けて文意感覚を常に磨いていてもそれとはまた開きもあるし、個性が違うのが若い頃の才です。それが才能なのか、才覚なのかは別個判断出来るとして私が拘ったのは思想の領域なのです。あんな悲惨な敗戦を経験した国にしては、全くまた戦前の心に戻っていること自体、由々しいのに、誰ひとり、そこを言わない。これはまた同じことが起こる前触れでは?とさえ、思って自分自身、禁じ手としてしっかり胸の奥に保管していました。同じことがやはり起る・・・そこを思ったのも歴史は繰り返す習性を持っていたからです。容子はいいように言いくるめられて、戦前の思想を丸ごと受け入れてしまうのでは?優しい彼女の感性はそういうのに弱い。母としては、忌み嫌っていた陣地へ行く覚悟も同時にあったことは言っておきましょう。夫は絶対に自分の母親を立てることは分かっていたけど、容子にだけは自分の踏んだ轍を体感させるわけにはいかない。しかし夫もそこは少しは思っていたことは私も気が付いてはいたのです。同じ右翼でも千差万別あるのが日本の特徴だったのです。