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 結婚という2文字に絡め取られしかもそこで、子育てと仕事も両立していくこと、至難の業。あちらも親は抜きにして新所帯を持ちたいという希望を表明してくれて私も安堵します。難しいことは最初からすべてわかってないとダメな完璧主義者。そういう風に親に育成されたことは嬉しいようで重荷でした。思想的に日本は自由の道を取りつつも前進前進で、これからは新しい分野もどんどん出て来る、そういったいけいけどんどん、破竹の勢いは国民に伝わっていました。若者の逞しさも同時に見ていたのです。しかし完全に人様の思惑通りに行きたくはない”自分の了見”が存在していた。美知に誘われ夫となる人と二人で普賢山に登り、帰りに相手の家を訪問したときです。仏壇に赤ちゃんの写真が飾ってある。遺影でしょうか。私はそれに驚愕してみんなの前を黙って去ります。彼は追い駆けて来る。私は何も知らされていなくてかなりショックだったのです。そ、そんな事実を何も結婚相手に伝えないなど、ある訳がない。よくよくあとから確かめると、美知は兄がすでに伝えていたかと勘違いし、兄は兄で、美知の口からすでに伝えてあるだろうと、両者の思いが完全すれ違った結果・・・。なんていう巡り合わせでしょう。私はこの時一回、結婚を断念します。そういう大事なことがなおざりでは良くない。自分にもしも子供が出来たとき、この赤ちゃんの無念さに、恨まれはしまいか?と心配したのです。