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 妹である美知は全く自分の結婚願望語らない。年ごろの娘にしてはそこが気に掛かる。しかし真相はじきに分かる。美知は自分が原爆の投下されたその日のことを少しだけ話してくれるのです。命からがら歩いて何日もかけて帰宅したこと。それを聞き、自分は真珠湾攻撃で開戦した海軍軍人を父親に持つことがいけないことのように思えた。大佐の娘であることは茶道教室のみんなが知っていたのです。当時はすまほや様々な交流のSNSはない。しかも大佐の娘だったことは教諭をしている現場でも自分から言ったことがない。しかしやはり、筋は分かってしまう。面接時に訊かれたり、様々な友人の口によって自分のことが語られる。自分はいない処でも起こる。なぜなら今のようにプライバシー感覚がそこまで浸透してはおらず、巷のニュースとして井戸端会議的に語られる親睦ニュースみたいな類いで扱われた。しかも女学校の教諭を兄がしていた経緯もあった。美知が誰かから聞きつけていたことは仕方ないことだったんでしょう。私は悪夢を頻繁に見ていたのです。階段が十四段目で外されて父親が絞首刑になっている・・・怖い夢です。なぜ、このゆめを見る?って何度も考えます。見ようとしなくとも夢は構わず宅配してくる。この夢を見なくなるまで結婚なんて出来ないを認識していたのです。