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 僕が驚くほどの貯蓄を見つけたのは煙草の保管してある箱の中だった。その金額を見て僕は眩暈がしそうになる。しかし姉もやはりおカネの匂いには敏感な人だった。ちょうど入院中の母を、姉も訪問してきて煙草が吸いたい!!っていう母を説き伏せている最中。ちょうど母は七十歳になっていた。やっぱりこの際、煙草は諦めないとね?って母親を大人しくさせる。僕の母親は僕の出産と同時期に煙草を吸い始めていた。長らく煙草愛好者だった。暇だからそうなったのか?そこは分からない。教諭を退き、完全な専業主婦になって家に閉じ籠っていた関係上と僕も思う。その煙草により心が解き放たれた・・・っていう開放感は有無を言わせず素晴らしかったんだろう。昔の文士みたいだ。お金はなくとも文士は煙草を口にあてがう。なぜなら絵になるから。一文の稼ぎがなくても武士は食わねど高楊枝みたいな風情が母にはどういう訳かあった。もしかしたら母が全く書かなかった故の、停滞していた感情が娘に由来したのかもしれない。第一、姉だけの志向でここまで来れた訳ではあるまい。僕達は血脈で繋がっている。そして思索も同時に受け継がれて今日に至る。姉のように、面白おかしく物事を書き連ねる者もいれば、読む方に回る人間もいるだろう。どっちにしても物流は尽きない。姉はいずれSNSのゴリラとして一世を風靡する。僕はその時、何処でどうしているのだろう。