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 僕も何度か言いかかって止めた。自分を制したことがあった。姉の鼻だ。ゴリラの面相はこの鼻が起因。しかしだ。ぶっきらぼうになったとしても、そこまで言うと姉は傷つくに違いない。そこは配慮が働いて僕はその先黙った。あなたの鼻は滑稽です!!ってまともに言った人間は姉の前に存在しなかったし、それはアワレミ?憐憫の情ではなかったのか?なにせ、姉の伴侶ですら鼻の欠点について生涯一回も触れなかった。見事としか言いようがない。ただ、姉はおかしなことで難癖を付けられている。小学四年生のとき海水浴で足の裏を藤壷で傷付けてから、姉は靴下を寝るときも履くようになっていて、伴侶がそれを厳重注意したらしい。靴下を履いたまま寝るなんていかにも外道。やめてくれ!!って。姉はその苦言を聞き入れなかった。自分は足の裏が可愛い。だからいつも保護されてないと安心して眠れない。しかし伴侶は公言して憚らない。お母さんはいけないことをしているんだよ!!子供達に向かって母の欠点としてみんなの前でぶちまける。子供達は父親の言うことに耳を傾け、自分達は、ちゃんと裸足で眠っているから安心してって、そう伝える。姉は言い出したら絶対に人の言うことは聞かない。そういう性格は悪いってばかり言えなくなった。自分を死守するということはそういうことではないだろうか。