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 僕にとっての夏休み。やっぱり一番怖かったのはそこに置いてある筏に乗って溺れた時だ。東望の浜海水浴場。大きな声を出そうとしても実際には出ない・・・っていう災難はある。声が声にならないのだ。大きな声を出してくれたのは親友だった。友達四人の中でももっともリーダーシップのある頭もいい友人。その声で助けに来てくれた大学生に僕らは救われた。なんか思い出してもぞくぞくする。水はまるで生き物のように僕に絡みついたからだ。怖いなんてもんじゃない。少しそれから僕は海が怖くなる。自分の中で遠ざけようとする気モチも出て来る。そういう僕もやはり小心者で自分がいざとなったら何も言えないことを、この海難事故で学ぶのだ。本当に仲間がいなかったら僕等は海の藻屑になっていただろう。持つべきものは親友なのだ。しかも声がデカい奴がいい。助けてくれ~~~って。僕は確かに声を出そうとしたんだ・・・しかしいきなり口の中に水が入ってきた。手足がどんどん沈んでいく恐怖で体もいつか雁字搦めになっていった。余裕をもつことの大事さだろう。自分の中で常にそこを持ってないといけない。ましてや海の中。誰も見ていなかったら大きな声も届かなかったに違いない。夏の思い出、しかも恐怖の思い出ではあるけど、生還出来た喜びは忘れない。