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 里子はギクっとします。こんな鮮烈な熟語があったのか・・・って。ちょうど娘が来ていてこう言ったのです。彼女は私の腹心だからって。里子は娘をうらやましく思うのです。どういう意味か?まずすまほで調べてみます。腹心。自分が長い時間を掛けて育成した・・・っていう意味?それならいきなり腹心は生まれはしないし、時間の醸成をまず思うのです。これは英訳では?ってまずもって存在もしないでしょう。信頼する部下は出てくるでしょうが本当に腹心を現した英語。なぜ、そう断言出来るのでしょう。日本はいろんな意味に於いて深いからでは?っと里子は想像します。いい意味でも悪い意味でも奥底が見えない。自分の思いをストレートに言う者は馬鹿にされ、常に罠に架けられる。こういう民族の心根の底の底まで分かるようになったのも里子が文学に心血を注いだからでしょう。表で言っていることと裏が違う・・・・このような国で本当の成功を収めることが出来るとすれば表も裏も読めてないといけない。しかし里子は相変わらずです。そこまで思いつつ、そよ風に身を任せています。文人がそういう二枚舌を持ったら国は基軸を失います。機軸はチャンスを包括しているのにそれさえ失うのです。だったら文人然として物事を客観的に見ていることも必須でしょう。文人には自分で切り開いた処のユートピアがある。ここを跨がせる相手はむしろ平素に於いて正直な人々。国がどんなに荒れ果てても文人にはボーダーラインがあるのです。