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 僕は猛省する。ずっと親父からの電話をしかとしていたのだ。バイトに行っていることを内密にしていた。それはやっぱりご法度だったな?ってわが身をつねる。一言言うべきだったし、僕は緊急連絡先として職場の電話番号を記して看護士さんに渡す。彼女はにっこり笑って頑張っていますね?バイトしているんですねって好感的だった。しかしそれを聞く親父は機嫌が悪い。俺がこんな闘病しているのにバイトか??ってまるで戦線で負傷した兵士が仲間に見捨てられたみたいに僕を正義感ない男呼ばわり。参ったな・・・っていうのが本音だ。一緒に闘病して欲しい!!それが家族の役割だろ??って徐に言われて僕も一瞬は真顔で考える。闘病はいつまで続くのか??っていうはてなマークだ。冷酷だと言われても構わない。介護するならするで、先が見えないと誰だって嫌気も差す。僕はしかし傲慢なのでは?と自分を二次詮索する。親父はまだ、僕を少年時代の僕だと勘違いしている節がある。悪いことにそこに絆を見出している。僕はもう34歳。ちっとも凛々しくはないし白髪も混じった腹黒いおっさんだ。間違いない。しかし父はまだ僕を、水も滴る紅顔の美少年だと錯覚している。き、き、きった~~~っていう位、僕が病室に入っていくと興奮し喜ぶのだ。