Ss309

 僕はずっと小さい時から姉を指標に置いて生きて来た。確かに数学関係は弱いが全く違う分野、例えばものを見る時のスタンスの置き方に決定打は潜む。僕が小学校六年生、姉が高校三年生のときだった。何を思ったか知らないがいきなり新聞配達を開始する。どの家に一番真っ先に配るかを姉は教えてくれる。この配る順番を任されている美味を話してくれる。私はね、まず同級生の家を目指して普賢山登山口の鳥居の下を自転車でくぐるの・・・すごい坂、一緒に後ろに転げて行きそうになるけどしっかり前を見て自転車を押す。そして最後の112軒目。ここはもうなだらかな平地。そこで近隣の数軒を回って仕事はおしまいって。僕は何回か姉の後ろについて自転車で一緒に回った記憶も鮮明だ。確かに配る順番任されているから楽しいけど・・・こ、こんなことは僕なら一週間でリタイアだろうって、正直思った。しかし姉の手前もっとずっと先を姉には吐いて欲しくて、なんでまた、こんな重たいものを自転車の前と後ろに積んでいくわけ?理由は?って。姉はソッコーは答えない。深く考えて僕に笑顔で言う。高校を転校したことで私には悪いレッテルが貼られてる・・・そのレッテルをラベルに張り替える。これは相当にしんどい挑戦になるって。僕はその時、思った。レッテルは姉の思い違いでは?って。なぜなら僕にはまだ災難が降り掛かってはいなかったからだ。