Ss241

 金を稼ぐ、そして自分の城を築く。男にとっての人生最大の買い物がやはり僕の場合、度外視出来ない母の存在が念頭にあった。しかし僕は力持ちでありながら母をベッドに移動させる時に腰を痛める。新築したばかり。そのことを幾ら説明しても中々疑い深い姉で、お金を全部横取りした挙句、母をホームに放り込んだって僕を責めた。しかし母への見舞いは毎日で、看護師さんたちの眼にも僕の姿は焼き付いていただろう。母が最後まで口からものを食べることが出来たことが今にして快挙だったと思う。何しろ、食べること、はべることが人生のみんなの目標的ステータス。そこが十二分に満たされた母の生涯を僕は幸せだった・・・とそう思いたい。何しろ、母には経済観念があった。家族旅行も行ったことがないのに父はひとり京都に何回、行っただろう。そこを思うと厭世主義者とはかけ離れた父の別の一面も垣間見える。食べることに精を出し、そしてこう括った。長く生きた者が勝者だと嘯いた。しかし、今になって父は僕らに何かを語りかけてくれる。人生は思い通りにいかないことが多すぎる・・・妻にも僕は結果認めてはもらえなかった・・・。男子一生の夢たる男の本懐を、食に頼ったのも僕のわがまま・・・。そこは許せよ?って。それを理解出来る美しい壮年に僕は到達をみた。