Ss124

 僕は心底参っている。久し振りに長男と会って、靴下の裏に穴があることで一言物申される。すぐにもゴミ箱に捨ててしまってよ!!と叱られる。一流どこに就職してもうすぐボーナスだというのに炉端焼きにも連れて行ってはくれない。しかし、安心なのは、長男は自分の母親、つまり僕の元嫁にも一銭も金は渡してないようで胸がスカっと来る。長男とはいってもひと粒種だ。政治の世界にも興味はあるようで、今の仕事に十年邁進して、政界入りもいいなって冗談めかして雑談してくることはあって、月に一回はお互いの近況報告も兼ねて会っている。海外赴任もある会社で、それを拒否したいと言うから僕はそれは止めた方がいいぞ!!って指南する。自分を固定化してしまいかねないからだ。会社は千里眼だ。入社時からの当人の様子はこと細かに観察し、そのディティール資料も持っている。それなのに、自分に負のレッテルを貼るというリスク絡みがマイナスに思える。しかし一瞬、現代の若者の真実の気持ちを見たようにも思う。井の中の蛙でいいんじゃないか?っていう島国根性だ。いつも理想はグローバルで、世界制覇だが、そこでは危険も隣り合わせだ。日本にいればなんとかなる。この第二島国根性は実は若者の間に蔓延るだけ蔓延って、精神構造をシャフトしている現況だ。自分を守って何が悪い?安全志向に拘って何が悪い?彼の瞳が純粋な輝きを保っているだけに抑え込めない。