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 本当に今日は覚悟をして伴侶にキャッシュカードの暗証番号を訊こうとして、度肝を抜かれる。退院するとき、一緒にCDコーナーに寄ればいいじゃないか?って折角のこっちの希望を交わされる。この前の十万はあるだろう?って言われれば御仕舞だけに、私も暫く相手の出方見ながら押し黙って、じゃあ、退院の時に頂戴ね?ってようやく返した処だったのです。伴侶のことはみんなもドケチだということは解っていたけど、そこが凡人ではない点です。あたしにキャッシュカードの番号なんかをさらさらっと言う伴侶なら底は知れている。彼からこう畳みかけられて私は夕方は、あたふたします。彼が具合が悪いのに、四日間もバイトに行った根性は間違った根性だったと静かに責め立てられるのです。ま、まさか....と私は我に返る。バイトが決まって彼もあんなに喜んでいたから、当然バイトに行くことが当たり前の正義だと思ってた私。彼はこう言うのです。優先順位が解ってないのが容子だね?って。じゃあ、言ってくれれば良かったのに、バイトに行くなってはっきり私を止めてくれれば良かったのに??って。彼は私を試したのです。どんな態度で日常を私が過ごしているか?作家にありがちな抜け落ちを彼は凝視して、心の中で冷笑しているのです。思い込みの激しさは当時、28歳の頃も同位でした。オーナーが借主になって私の負債を肩代わりしたとばかり数日間は思っていたのです。