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 ここまで勝ち星に恵まれなかったダルビッシュがようやく330日ぶりに白星を飾ることが出来て、僕としてはこんなに嬉しい日はない。なぜなら、彼のことがまるで自分のことのように思えてずっと悩んで来たからだ。世の中の多くの人達が彼の年俸が高いことを話題にして、そればかりをけなしていたことも注目のきっかけだった。彼がいい年俸を貰えているのは何も彼自身が運が良かったからではなく事実上のこれまでの評価額が高かったことが作用していて、計算も何もしてなかったカブスみたいに言われること自体が正直、僕には異様だった。誰だって、好きで負けている訳がない。噛み合いの問題なのだ。自分が絶好調でもチームがダメなときもあれば、自分はそうでもないのに、とことん運に絡められて勝つこともある。そういったからくりが勝負の世界にはあるのだ。僕はよく、投手と作家は似たもの商売だと話すのもそこら辺に訳がある。自分ではいい球を放ったはずないのに、相手が勝手にボール振ってくれたりも運のうちだろう。かといってスピードあるキメダマをアッパーデッキに持って行かれないとはどの投手も言えないのだ。運と不運を秤に掛ければ、必ず運の方が重たいと皆は思うだろう。そこが勘違いで、僕は不運の重たさを知っている。その重たい不運をダルビッシュ有は今日、撥ね退けた。この根性を僕は高く評価する。