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 これしきのバイト力も自分には温存していなかったのか?に自分で萎えてしまう前に、しっかり検証しておく危機感が里子を襲っていたのです。あんなに憧れた飲食業にたったの四日しか勤務することが出来ずリタイアしてしまう。惨めで自分が信じられなくなる瞬間でしたが、ぎっくり腰の痛みはまだ、以前として里子を起床時、立ち上がる時に襲ってくるという有様。一体全体何が良くなかったんだろう。何が要因だったんだろう。確かに、年齢のせいを思うことも出来はしたのですが、周囲には里子の年齢に近い人もまばらだけど居た。彼女達は出来たのに、自分がたった四日でリタイアというのは一気に自信を失う動揺を炙り出していたのです。軽快にリズミカルに階段を上がって、お客様の下げたカップや灰皿をトレーに纏めて下まで下って行く。こんな簡単なことが、二十代にはさっそうと出来たことが、やはり難儀になって来ている。この問題は人生百年時代のシフトを組む際に大いなる疑問符を呈して来たのです。人生百年のうちの九十年は、足がしっかり動いて歩いているを想定しているのに、このざまは一体なんでしょう。四日でカフェをリタイアして腰に手を充てているのです。こんな状態で人生百年時代のシフトが採れる訳ない。里子は自分の当初の考えに立ち戻って分析します。どこから自信は生まれていたのか?その辺も曖昧だったのです。