am61

 大学を出て公務員として40年間務め上げた俺の先輩が定年退職した。奇しくも昨日おとついの金曜日。俺達は不思議な縁があって、マイナンバー付きの住民票を取りに行き、たまたま彼が俺の係りになって話す機会を得るのだが、心からよくぞ四十年も頑張ったね?っていう尊厳の気持ちが湧いて来ている自分の変化に戦く。嬉しい変化だが、こういう気持ちは以前の俺なら全く沸いては来ない種類のものだった。お役所に対して自分自身が持っていた偏見以外の何物でもなくなぜ、そういう厳しい、しかもねじ曲がった見方でいたか、自分自身を推察してみると彼らが法外な給料を約束されていることに羨ましさがあったというのが本音としてある。しかし彼も意外な側面を見せ付ける。まだこれ以上、働きたかったのに??というような貪欲さをくやしさを、僕に対して滲ませる。なぜ、辞めなきゃいけないかを彼に説明して欲しい位のアピールを僕に対して起こしているのだ。なぜなら僕が部外者だからという安心感があるからだろう。公務員でさえ、これだけ躍起になって働くことに向かっている果敢さを垣間見て、自分も発破を掛けられている事実に愕然とくる。彼らは退職金も並み大抵ではないし、年金だって三年後には支給で額面はそれこそ俺達の8倍以上。それなのにしっかりと人生百年時代を思っているのか、働く意欲を漲らせて金銭獲得に奔走しているという現実。僕はそれを若者のようにリアール現実と口ずさんでみる。家に帰ってバックを開けるとなんと彼が握っていた役所のボールペンが入っている。40年も勤務した彼の忘れ形見として真摯に受け取ったが、それが知らない内ショルダーバッグに忍び込んでいたことが天晴だった。