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 素朴で衒いのない彼は和風喫茶の女性経営者と朗らかに会話しつつ、又来ます!!ってレジ会計をして、私と別れます。同伴出勤に使うお金があったら、君の服でもアクセサリーでも購入してあげたい!!は嫌と言う程伝わって、私も笑顔でバイバイするしかありません。東洋軒に着くと彼には言えなかった言葉群がどんどん湯水のように頭に流れ込んで来て、その時は返答しかねたけど、子供達は私にとって命よりも大事な宝物。それを両親に預けるっていうのは、やっぱり、無理っていう結論で固まるのです。しかし魅力的な誘いではあったのです。不動産会社勤務の男性の魅力はやはり固定資産で彼はすでに八王子にマンションを購入し結婚に備えていた。そういう計画的な人生設計を目の前にして、私は自分の負債を指折り数えます。その頃でもすでにお客様から発生した店での焦げ付き以外に、カード負債を背負っていたのです。返せない金額ではない。コマネズミになって働き捲って追い付けないまでではないものの、働き者が働き蜂にならざるを得ない部分が鮮明で沈痛だったのです。給料日、すべての支払いを終えれば手元に五万も残らない。こんな生活の裏ぶれ方を彼に話すことは、あゆみのプライドが許さなかった。そんな弱みを話してしまう程、事実親しくはなかったのです。クリスマスイヴには盛大にしゃぶしゃぶで祝おうって言われたことを、大事にしたかったのもある。しゃぶしゃぶ??私はプロポーズは断っても、お食事には快諾OKの姿勢でいたのです。