里子には娘たちとの交流というお楽しみブレイクがあったはずで、数回ラインをするのですが、まともな答えは返って来ない。その時に感じたのは、個々が自分の人生に責任を持って進む時代がドックインしていること。返事がない訳ではないものの乗り気ではない。彼女達は確実に自分を除外して日常をすり抜けて今日あること。このどうしようもない世代間親子間に生じたブロックは、本当にラインをブロックされるよりもある意味空虚で、とうとう第一線から取り残されてしまった自分の存在を認めざるをえない。そこまでの辛気臭い落胆に追い込まれるのです...。しかし瑞々しい映像を見て洗礼を浴びる。若い日の桃井かおりが演じるひとみが結婚式を抜け出して、ウェディングドレスのままで、とらやの玄関まで逃げて来た姿に覚醒するのです。現代人の結婚への憂鬱を、この寅さんの映画は見事に表現していて全く、古臭さがない。転じて今の結婚感がどうも言い訳や逃げでてんこ盛りになって、しかも老朽化している現状に腹が立ってくるのです。結婚はかつて初初しいものだったのに、メディアの煽りや虚飾で、ここまでつまらないものに転落してしまっている現実。寅さんが田園調布のことを田園地帯って呼ぶことにも好感が持てて、不世出の俳優さんだったなあっていう思いを新たにしたのです。彼こそが日本の宝だった。結婚感を原点に戻すことが火急で、メディアの影響をまともに受けず、一笑に付す態度も肝心だって...。そこを決定付けたのは、日本の映画は欧米に全然負けていない。この確信が里子を挑戦へと導いて行くのです。