ルビー・ウーマンr352 ポスティングに詳しくなって、どんどん他の町へと繰り広げて行く自分の本当の気持ちは、父と同じ方向を見ていたのです。世の中で絶対無理とか、決め付けは果たして出来るでしょうか?いいえ、その時の風向きも関与で父が心で淡くも狙ったような一発逆転こそありませんでしたが、業の強さを周囲に見せ付けたことが印象に残るのです。街宣カーもなく、うぐいす嬢も出来ない私に出来ることはこのポスティングしかなかった。しかしこの選挙も惨敗に終わって、ようやく父は諦めの顔、せいせいした口調で私に感想を言うのです。父の上梓した本にはこの選挙のことが一行もないのです。しかしすべてを出し尽して、負けたという爽快感はあったのです。町の人々もやれやれの表情でそこで無口になるような父なら最初から出馬してはいないでしょう。父は方向変換を着々と図るのです。政治家の道はきっぱりと諦めて、生命保険会社に10年余り勤務した後は浄土真宗の勉強に邁進するのです。父は教職員専門の保険会社のセールスマンとしてバスであちこち契約を獲りに回りました。その後は、この道に惹かれて生涯、宗教の意義についてを研究するのです。でも時々、政治家になれなかったことは本人は言わないけれどくやしかっただろうな?ってそこは解ります。誰もが人生では、そういう叶わないことを大事にして、傷を負っても又、起き上がって生きていくしかないことを私も学んだのです。