スノーサファイア・マンss11 県立高校に入学した初の全校朝会で校長がこう言ったのだという。いいかあ、成績のかんばしくない者はいわば腐ったリンゴだ。そういうりんごを同じ箱に入れておけば他のリンゴまで品質が落ちてしまう。この学校は進学校だ。それなりの厳しい教育実践をしているから、そこを覚悟しておくように...。この主旨を聞く限り、現代から遠くかい離している何かを禁じえない。根本は同じだ。しかしわざわざ誰も口に出しては言わない。利口だからだ。それこそ、成績のある一定以上に校長がここまで拘って、しかも入学間もない生徒達に檄を飛ばしたっていう事実に、僕は正直だなあって感動すら覚える。しかし姉の方は戦慄を覚えて震えたというから、やはり作家と言うのは弱冠十五歳でも感受性は鋭いんだな...って僕なりに評価する。その校長の弁論の核にはきっと学校のレベルを他の県立高校の西、南、そして北に負けてなるものか?の一念だったと思う。そういう競争の倫理の火車に校長はきっと同乗していたに違いないのだ。しかしここは作家にとっては外せない重大な言論のポイントになっていて、それを理解出来ずに反発した若い十五歳の姉の発奮を今更ながら僕は感じて爽快になる。こんな腐った校長はいないし、事実、教育者としてもあるまじき。誰も称賛はしないだろう。それが今の世の中。良かった....と僕はひとまず安堵で溜飲を下げたのだった。