ルビー・ウーマンr318 あたしはその頃、深い憔悴に恋の部分では陥っていたのです。九月に知り合い、お互い打ち解け、文通していた助教授と破たんしてしまいその部下である人物だけはその後どうなったかを知りたいがゆえ文通だけはしていたんですが、心が冷凍庫状態。大男が雪道をどかどか歩いて去ったみたいに数々穴が開いていたのです。きっかけは彼が手紙の中にお金を二万円いつも入れていたことです。そのお金まで旦那に獲られてしまいくやしいのなんのって。しかも相手に連絡して大騒ぎになってしまうのです。旦那はそういう手紙を交換する文通だって死刑に相当だろう?って襲いかかってくるのですが、しかし、手まで上げません。こういう時に医師である彼がもっと発奮して、自分のすべてを捨て去って、あの黄昏流星群のように色めき立ってくれれば御の字だったんですが世の中型どおり。その時学ぶのです。一流の一流どころが何を主眼に動いているか?人生を納めているか?私は頭を冷やして時間を見つめます。もっと仕事に邁進すべきでは?そこも甘かったと恋に現を抜かしてしまった自分を責めるのです。しかしこのままでは自分は恋の汚名に覆われたシンセサイザーでしかない。私はこういった苦い経験を音楽や文学に投影して初めて、この恋もどこかで報われるのでは?を思ったのです。どういう経緯でそうなったにしろ、男として一人の人間として最後くらい説明が欲しかった...と。