イエローダイヤ・マンy691 一時間でも居所がわからないことが僕の母には憂鬱でそういった流れにいつも飲み込まれる自分を変えようと、場所は言うけど相手の名前をあえて言わずに遊びに行ったこともある。綿密な母だった。小学生とはいえ、相手も察知は早い。お母さんがうるさ型だと知るなり普通は、早いとこ帰ってと言うのに、僕をにやにや傍観しながら笑っているのだ。僕が名前を言わなかったのはエレベーターのないそのマンションには集合ポストも一階にはなく本当にそれぞれの名前も部屋の前にないくらい貧しいマンションで、それを母に見せようとした訳ではないものの、やはり敵は只ものではなかった。ピンポーンを一軒一軒押して、なんと俺の友達の部屋まで辿り付く。ピンポンが鳴らないとノック。うっぜ~な?という言葉はその当時ないが、彼も段々委縮した顔になってくる。お父さん何やってる人?僕はすんなり警官と答える。彼はなおさら嫌な顔になって、お母さんがここに来る前に帰って欲しいんだけど...を言い出す。僕は悲しかった。自分の性〔さが〕を嫌という程味わった。しかし母親の性向は替えられないのだ。確かめないと帰らない。その意思の強さに僕は服従するしかなかった。友達はそれから一緒に遊ぼう!!とは言ってこなくなった。母親とはかくも強引であることを知るゆえ結婚もそれに似ている様相は感知出来る。決して侮れない。