イエローダイヤ・マンy635 父にプレゼントしようと思っていたドクターチェアだが、父は意外にもこういう回答で僕に迫ってきた。テレビを見ながらずんずん炬燵の下に体が沈んでいく、体全体があったかいし、しかも下半身どころか両方の肩も冷えない。今使っている通販で購入の座イスで十分だから、むしろお前が使え!!って。僕は一瞬ショックだったが、確かに父は炬燵が大好きで、冬はそれがないと過ごせない。そこを思うと強要も出来ないまま僕は自分の部屋に持って帰る。このことは相手にプレゼントする際の重大な項目になるだろう。父使用の座椅子もかなり骨盤に良くて最初は新聞広告で知ったらしい。売れ行きも抜群のものだった。使っていてなおその効能に目覚めたからこそ、父は断ってきたのだろう。しかも冬ということもあり、そのまま座椅子の上で眠れるのだ。角度も段階で選べる。むしろお前が瞑想する時にぴったりじゃあないか?っていう父の温かい言葉には、叱咤激励も含まれると僕は直感する。瞑想無くして作家の商売はカンコ鳥かあ......。部屋で座ってみるもその快感は有無を言わせず僕を襲ってくる。すっぽり骨盤を包み込む圧縮度合がいいのだ。父は高価なものであることで、拒否ったのではなく、もっといい文章の創出の為にはむしろ僕に最適だと、この空間の風物詩を譲ったに違いない。思えばこの椅子の軽さが僕を救った。なぜなら重たい品物なら、父は返品しなかった可能性もあって、無理して貰ったかもしれない。