サファイア・マン《かけがいのない男編》〔189〕二十六歳になって二ケ月経過して彼らは長崎での学会に参加することで昼間は医学研究発表会、そして夜はようちゃんの勤めるクラブに招かれてフロアにいたのです。まだ医師になって駆け出しだった若い彼が左に座ってようちゃんの右に座ったのは四十代前半の助教授の彼で、どちらとも打ち解けて名刺を交わしてお互いの住所を教え合うのです。ようちゃんには手紙をしたためる習慣がその頃あったのです。お店に来て下さったお客様に感謝の気持ちを伝える手段は手紙が一番いい!!っていう確信もあって、来て下さったお客様が名刺を下さる場合は特に、それが了承だと思ってお礼の気持ちを手紙に書いて投函したのです。ようちゃんは自分が文系だったことで、理数系の彼らの出世や地位上昇が医学会で素晴らしい発表をして喝采を浴びる時なら、文系ならどうなんだろう?って実は日頃から関心を持っていたのです。私達文系はうだつも上がらないまま、その日暮らしであってはならないものの、何か起点となるような機軸がないことや、発表の機会がないことを日々悩んでいたといえます。そんな時、ようちゃんは自分の詩歌を読んでもらうことで何か進展はないだろうか?と発端を見極めます。自分の詩歌が優れているのなら、何か、そこに、感想があるのでは?と期待したのです。