サファイア・マン《緻密な男編》〔186〕女性が持つ憧れ心とそれに伴う、ジェラシー心の深層部位にようちゃんは直面していて、それは伯母がこう言った時です。なんで、母が大佐の娘だっていう処の誇りをあっさりと戦後、捨ててしまったが、わからない!!って。しかしそれを補うような補完する言葉もすぐさま出して来て、ようちゃんを困惑させるのです。敗戦によって、天と地がひっくり返ったのよ、そこはわかるけどもね?!って。この手の言い回しにようちゃんは不信感を抱くのです。本当に母を思っていたら絶対に出ないセリフ。どこかで、せん望が憎しみに変わっていることを攫むものの、その先に不思議なことをのたまうのです。ねえ?脇田家からは、女系の後継ぎは容子ちゃんだけだって、聞いている。そのことをこれから大事にしていこう!!って思わない?ええ?ってようちゃんは徐に首をかしげます。大佐という言葉さえも戦後は死語になっているのに、なんでこの人はここまで言うの?って。勉強不足のようちゃんにだって、当時だって、理解出来ました。そんなことを誇りにすれば、人々からあざ笑われるのでは?って。母が脇田大佐のことを一切口外しなかったことでも、その辺は理解出来ていたのです。