サファイア・マン《面白い男編》〔185〕伯母にはエキセントリックな部分があって、実は彼女のことを親戚の姪っこたちはおろか、おいっこ達も嫌気していることをその頃ようちゃんは悟っていたのです。なぜ、こうもあからさまに嫌悪感を皆に抱かれるのかようちゃんはうっすらと悟っていた最中だったといえます。ちょうど、こういう場面があったのです。自分がお子遣いをおねだりしようと、彼女が校門を出る頃を見計らって待っていると、何と別の従姉も幼子の手を引いて来ているのです。少し安堵が沸いてきます。私だけがお金に困窮しているわけではない!!って。しかし今、六十歳を超えて見て、ここまで、貧困に喘いでいるいとこは皆無です。だからこそ、ようちゃんは回想録をしたためているのかもしれません。伯母は京都になぜ、自分の父親や、弟や、妹が魂を奪われてしまったのか?そこには、歴然とした理由が存在するはずだ!!と意義深くのたまうのですが、ようちゃんはまだ、その頃は、脇田大佐の経歴さえ知りません。世の中にパソコンが出てきて、各家庭で息付くようになるには、それから、八年の歳月を必要としていたのです。今ならすぐさま、脇田喜一郎は出て来ますが、当時は文献を手に入れようとしても限界があって、本に精通していた父でさえ、知らなかったのです。最初に制作の当初から関わった村雨という名前すら、父も存外だったのです。