サファイア・マン《面白い男編》〔177〕大きなお屋敷で子供達も全員ハッスルしています。テレビゲームもあって屋根に登っている子もいて途端に心配になりますが、ようちゃんはここは長女に監督させて、シゲルちゃんの幸せそうな面持ちを見ながら自分の将来を展望していたのです。彼の本心がその時に見えたように思います。子供を立派にしたい!!っていう願望が彼は人並外れているっていう発見ですがそれには、相当の苦難が立ちはだかることをようちゃんは知っていてあえて、それを見ないようにしたのです。例えば高校に子供が通っていれば妻子を置いて自分ひとり転勤するのが当たり前という思想で、ようちゃんは英才教育を任されている立場に実は戦々恐々としてしまうのです。そしてこの時点で決定していることもあったのです。まだその時はわからなかったけど、ようちゃんのお腹に三男がいたこと、そしてその年の八月には、シゲルちゃんが支店長として宇部市に転勤ということ。このふたつは近々の未来でありながらどちらもまだ夫婦にも周囲にも見えていなかったという不思議。ようちゃんは多額の負債を抱えながらも、自転車操業を駆使してその日その日を無事に乗り切っていた。そして持ちうるエネルギーのすべてをそこに投じていたという立証にもなるのです。