アクアマリン・マン《真春と真秋の間編》〔9〕俺が潜在的に母のことをずっと思い続けてきたことと相反するように母のことを務めて考えるまいとその距離を思い断念したこともあった。しかしどこに住むのかも知らないままではどんなに俺が溌剌とした表情を見せてもどこかに陰りを見られるのでは?との疑惑はあった。親の存在を知りながら探そうともしないなど自堕落以外の何物でもない。この心境に変わっていったのも嫁の豹変で彼女が今熱弁している教育行脚にもしも到達点があって、それを終えて俺の元へ帰って来る日があるとしても、実際俺は受け容れ不可能というジレンマも介在していた。夫よりも息子が大事という気持ちはどの母親にもあるだろう。しかし強弱もあると思う。女房を見ても俺には他人としか思えないし、子供に携帯も持たせていないようで、それも俺との連絡を恐れて?とか疑ってしまう。例えそうではなくとももはや俺には疑心暗鬼しかなくその鬼の存在なくして母親を探そう!!などという気持ちにまではならなかっただろう。煽られる程にまで幸福な奴を見る事は滅多に無くなった。皆が何らか心の病を抱えていて、そいつを見つけた時に俺はホッとするのだ。