サファイア・マン《緻密な男編》〔167〕父はシゲルちゃんが常宿している宿を訪ねて一席を設けますが、シゲルちゃんにはそれに対する不満はあって、なぜ父親であるのに娘を納得させることが出来ないかをいぶかるのです。九十パーセントの成功率を確信していたのにこの父親には威厳というものがまるで無いのではないか?と。しかしここは一席に乗じて妻が何を考えどんな話をしていたかを知る絶好のチャンス。その頃は家を出て二ケ月。最初の宿としていたオリエンタルホテルを出て、その次に泊まったエスパも出て、春吉界隈にある小さなサウナに身を寄せていたのです。一緒に天神まで行きましょう!!と誘うと父は嬉しそうに子供さながら喜ぶ。この姿を見て、この父親には威厳がないばかりか、常に自分中心の生活をして来た道楽者ではないのか?という懐疑が芽生えたと言います。教職員の世界に33年間も務め揉まれて今日あるとはどうしても想像がつかなかったと後々話している。父は夜間中学に通ったりと、金銭的に苦労はしていますが珍しい品種だったのです。漲る処の母性愛で育てられた!!という内訳です。どんな目に遭っても、タヤが側にいて常に励ましてくれたのです。