アクアマリン・マン《真春と真秋の間編》〔2〕俺の剣道の武具を入れてある袋そのものが中々見つからず、ようやく父の残した大きな衣装箱を開けている最中にも見つかる。面タオル一式と足袋。そしてその中に数ある試合表が置いてあった。剣道の武具袋はその後ろにあって、俺はまず小手を調べる。ここに何か紙切れのようなものが?誰かに金を親父は貸していてその催促をしていることがあって、俺が部屋に入ると慌てて電話を切っていた。誰かに金を貸すような余裕は当時ならあっただろう。小手先で仕事をするな?それがすべての過ちを作る・・・と説いていた父で、自分が貧しくて出来なかった剣道を俺にしてみないか?ある日勧めた。小五から高卒まで剣道を嗜むが大学で辞めてしまう・・・。出来る環境はあったが、俺は自分の変身願望をくゆらせる方が先で、様々な友達と知り合い今日を楽しく快活に!!がモットーだった。剣道着を久振りに着てみることにしたのだ。凡そ変な匂いがしていただろうが、時間が経過していて風化を帯びている。この剣道着には愛着と同時に、敗者の心理が封印されてあるのだ。