イエローダイヤ・マン《標榜編》〔375〕どうしようもない親子馬鹿の母と娘がお互いの体にもたれ掛りながら、俺の前でオーダーを選んでいるのだが、アレコレ迷って注文もコロコロ変わる。オーダーを聞き取るおばちゃんよりも腹が立ったと見えて、厨房内のチャキチャキの女性がご注文を聞いときましょうか?と俺に声を掛けた。俺は鮭幕の内とのり弁と告げて、前にいる女子高生と母親を見ていた。絶対に頼みたかったのはコレ!!と娘が発してトン汁お願いしま~す!と言うとおばちゃんが、今日は売り切れましたとつっけんどん。えええ??なんでやねん??ってしつこく猛攻し捲る。俺はこのトン汁を最近は滅多に頼まない。近所にトン汁が美味い屋台があって、時々、鍋を持って買いに行っているのだ。気さくなオヤジさんで一日に百人分くらいの豚汁を作って、とろろこんぶのおにぎりと一緒に売っている。オヤジさんと知り合いになって、豚汁にもランクがあることを知る。しばらくしない内にチャキチャキの女性の声がエコーを入れたように聞こえて来る。オーダー取りのおばちゃんと交代したのだろうか。順番は前後しますが93番の番号札のお客様~どうぞ~母と娘がジロっと俺を睨んできた。