イエローダイヤ・マン《標榜編》〔340〕俺の面接はオーナー自身によるもので、小柄で気さくなオーナーが趣味にしているのが釣り。気持もリラックスして最高の盛り上がりで俺は面接の結果を待った。アルバイトといえど数日は掛かる。俺は断られることも視野に入れていた。たびたび現われて弁当を購入していたことをオーナーは知っていたからだ。ここは難しい線引きで、必ずしも雇われるという確信はなく、数日間はすったもんだで頭の中はデングリ返っていた。それもそのはず、その頃のエブリワンは破竹の勢いで近い場所に高等学校や団地があることでひっきりなしの顧客で溢れ返っていた。俺はパン工房かもしくは弁当作りか、希望を訊かれたがどっちでも構わない趣旨を伝えていた。そのことが功を奏じたのか朝の五時から八時時までの弁当作りで厨房に入ることになる。給料は月額五万はあってことなきをえる。自分の望む自由な人生を選び取るには、我慢が必要なことを初めて体で知るのだ。両親から少しずつ離れて行けるようになったきっかけを攫む。俺はしかし正社員に拘った。いつしかその店にも別れを告げ、辞めたあとに一回だけ店に立ち寄った。奥様が雑誌を見ていたのだ。夕方の六時くらいで帰りに店内でざっくり買い物をしていた。俺は近付く・・・。