ピーパー・ウーマン《ジュエリー・ボックス編》〔17〕マレの頭を占めていたのはあの下駄箱でした。普通ならネットカフェがどうなっているのか?靴は部屋の前に散らかって散在しているのが常。しかしオーナーのあの店は下駄箱があって、オーナーみずからがそこに直していたのです。一番の部屋なら一番の付いた下駄箱へ。その試みもでしたがどうしてもお金の出来なかった人々に関してはジュエリー・ボックスがあって、それがニセモノであるかホンモノかは別にして何か入れておけば泊まれるというシステムがあったのです。銀行のボックスのように厳重なものではありませんが、一応鍵も付いていて三日間は泊まれたのです。その時間内にお金が出来れば問題はない・・・とオーナーは考えていたようで追加料金も取らなかったのです。しかし三日過ぎたらジュエリーを取り上げて退席してもらわないといけません。マレはここでオーナーが現代の若者をよく観察していることに気が付くのです。信じてもらえることに若者がいかに拘っているかで、時にはバイクやゲンチャリを置いて泊まる若者もいました。そして三日間置くことで親御さんと共に現われ故郷に帰っていく若者も多いんですよ・・・って。マレにもはや迷いはありませんでした。携帯の向こうにオーナーはすでにいたのです。