サファイア・マン《緻密な男編》〔140〕それから中々彼女は現われずインターホンが鳴るたびドキドキしていた自分の思いあがりに気が付くのです。このエリアを回る彼女は何人もの顧客を抱えていてその中のひとりに過ぎない自分の立場にひんやりするのです。保険にでも入れば別だけど、このままだと彼女が来るのは半年後かもしれないとそう思ったが運の内、固定電話が鳴ります。これからお邪魔しても構いませんか~?ふたつ返事でOKした自分の態度には寂しがり屋の一面が露に出ていてそのことを彼女が勘付いていたようなのです。自分とは違う彼女のプライドの高さは感じていたものの庶民的な部分も持ち合わせ、特に屈託のない笑顔が彼女を保険ウーマンとして輝かせていたのです。ショートケーキを買って来ようと思っているんですが、子供さんは四人で間違いないですよね?ええ?はい、四人ですが無理はしないでね?とは答えたものの、食べ物に特に弱い一面を持つ自分の本性が彼女にはモロに見えていたのでは?と震撼するのです。ワイルドスロトベリーの茶器を取り出して、そのくすんだトーンに狼狽し、慌ててハイター液を使い汚れを取る手続きを施します。彼女に自分の人生の汚点を見せることは絶対したくない!!そういう気構えでいたのです。